『口伝』
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 伝え合う事の中には少なく無い情報を大切にして伝えていく、その中には人と人との繋がりから産まれる事が少なくない。固く閉ざしていく殻の部分がひび割れるほどの事を、一つずつ大事にして、掌で伝えるように、何度も丹念な事を繰り返し、その都度に奪われる熱を知っても尚。止めないでいるうちに、見えるかも見えないかも分から無い。長い時間を掛けて。命の熱は感情、思考、発想。その外殻をなぞりながら、内の事を思う。何時訪れるかも分から無いそれでも続けて。嫌になる事だって沢山ある。それでも。本当に離れられない事を知って待ちつづけて。明日が来ないとしても。それでも良いと思えるほどに。

 伝える事はずっと同じ方法で語り継がれていく。歌の中には口伝でしか歌えない歌がある。それは本当であるし、歌い手は、良く聞き、良く歌う。民謡の中でも、人の歌声だけで伝えられるモノもある。楽譜では無くて。歌い方の中には失われた事が沢山ある。拾い集めて挑戦する人だっている。僅かな残されたピースを合わせて。現代に蘇った歌唱法だってある。

 耐えられない事はある。またって事が無く成ってしまう事だってある。諦める事だってある。それでも。大事な事に変わりがない。生きてる事で伝えられる事が有る。私はそう思っている。誰だって持ってる口伝を大事にしている。同じ言葉でも大事な言葉が有る。


自由詩 『口伝』 Copyright 媒体 2016-05-03 05:27:39
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