たまねぎ
服部 剛
夕暮れの帰り道で
ジャージ姿の青年達が
手にしたスマートフォンと
睨めっこしながら下校している。
少々早足で追い越す、僕は
声無き声で呟いた。
――染色体の一本多い、周は
彼等と異なる道を…歩むのか。
時折妻は、夜になると
ちゃぶ台を引っくり返す
とまでは、いかないが
あまりに深い葛藤の暗闇を余す所なく
僕に、吐露する。
泉の如く?溢れ出る言葉に
只、うん、うん、と
無能に僕は頷いた、後
階段をゆっくり上がり
部屋のドアをぱたん、と閉めて
ひと時坐って、考える人になる。
――妻よ、今に見ていろ。
いつになるのか分からぬが
屈託もなく微笑む、幼い周の
存在という玉葱を
何処までも、何処までも
剥いてゆくなら…僕には、視える。
世界にひとつの
真珠よりも一際、丸く光る
いのちの賜物