恋愛焦土
本木はじめ

忘れてる憶えていない僕たちはいつからここにひとりでいるの


真っ二つに裂ける桃です落下して蟻がたかって朽ちてさよなら


この場所からもっとも遠いところとはたとえばあなたの微笑むところ


増えてゆく不安や不穏な雰囲気が深夜の森のふたりの逢瀬


迷い込む森のみずうみ陽は落ちて暗いぼくらが湖面にゆれる


脆弱なふたつの肺で呼吸する息を吸うため息を吐くため


連呼するあなたの名前わすれてるぼくの名前を思い出せずに


胃液など吐き出している深夜二時ときには咲かない花もあります


囲まれて両腕あげる人生にまもなくわたしは殺されるだろう


閉じ込めて孤島に漂い流れ着くぼくの腕やらきみの脚やら


振り返り何度だれかを呼ぼうともぼくら以外にぼくらはいない


もう一度残酷だけど生きてみて首に見えないロープをかけて


ピアノから黒鍵だけを取り外し中途半端な生き方やめる


憶えてるきみとの記憶つかさどる細胞たちが死滅するまで


そしてここも山の向こうに海があり海の向こうに山がある土地





短歌 恋愛焦土 Copyright 本木はじめ 2005-02-23 21:51:10
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