ブルーライトに照らされて
ただのみきや

測れない
計れない
量れない
ものをはかろうと
脳は身をよじるが
生まれたのは不肖の子ばかり
どれ一つ それ一つでは
役に立たないものたちを
手妻よろしくこき使い
広げてきた
安心の揺り籠

空想は科学に
理論は実証に
先走ったが
後者が追い付いたというよりは
前者が息切れを始めたか
世界のことも
先のことも
その先のことも
全部わかっている
そんな気分になってくる

閉塞感に囚われた人間と
閉塞した地球は良く似ている
表層意識では分裂し争いながら
市場経済の血脈とネットの神経で覆われた
一個の土塊は
外面は涼しげ
内はドロドロの情念を隠し持ち
己では変えようのない道筋を歩くのみ
孤独に延々と
時間か
出来事かに
滅ぼされる
その日まで

脳は己の影に見入る
アンニュイに実体はなくて良い
生の去勢にナイフは必要ない
feedback/loop/……entropy

測れない
計れない
量り知れない
ものを推しはかる
脳は世界ではなく
己をはかり
己を謀って
しぼんでいった
見開いた大きな一つの眼が
黒い芥子粒に収縮するように
肉体はわなないた
止められない
脳は体を心は脳を



         《ブルーライトに照らされて:2016年4月2日》







自由詩 ブルーライトに照らされて Copyright ただのみきや 2016-04-02 23:14:45
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