仮面
葉leaf



病を得て復職してから私は長いトンネルをくぐってようやく陽の当たる場所へと出てきた。だが、いくら太陽が照っていても私は世界から敵意を感じ続けた。どうも人々は以前とは違った態度をとっているかのようだった。人々は私の噂話をし、私を異物扱いし、私を排除しようとしているかのように思えたのだ。人々の表情が依然と違って歪んでしまったように思えたのだ。
だが、他人の顔は私自身の顔と連動している。私自身の顔が歪んでしまえば、その鏡として他人の顔も歪んでしまうのだ。私が仮面をかぶれば他人も仮面をかぶる。私は病み上がりの時期、病によって人間不信の仮面をかぶらせられてしまっていた。その仮面と共鳴するように、人々もまた敵意の仮面をかぶっていた。
だが、この仮面ももろいもので、しばらく風雨を浴びているうちに少しずつはがれていった。人間不信の仮面がほとんど剥がれ落ちたとき、人々もまた敵意の仮面を外し去っていた。私たちは再び素顔の表情でお互いを映し合える。仮面同士の浅い理解ではなく、素顔同士の微細で深い共感や共鳴でもってお互いを察し合えるのである。
私は他人の敵意の仮面におびえ続けていた。そこにあるのは見知らぬ人間の仮面だった。だが仮面を外してしまえば見知った同士、霧が晴れたようなさわやかさで私もまた素顔で人と映し合える。私と他人を覆う仮面が崩れたとき、世界を覆う霧は見事に晴れ上がったのだった。


自由詩 仮面 Copyright 葉leaf 2016-03-04 05:33:09
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