錆びたベンチ
石田とわ



     木々は裸に剥かれ冷たい風に
     枝先を震わせている
     白いベンチは錆ついて
     今はだれも座るものもない
     緑の葉が深呼吸を繰り返す
     あの深くて濃い季節を夢にみる
     あなたは確かにここにいた
     本を片手に煙草をふかし
     その時が来ることを知らぬげに
     静かに微笑んでいた
     あれから何度、
     夏と冬を繰り返したのか
     まわりの景色は少しずつ
     色褪せ、色鮮やかに変貌し
     そんなものに囲まれながら
     今日も一歩、
     あなたに近づいてゆく
     ゆっくりと確実に。
     凍える灰色のこの景色も
     錆びてしまった白いベンチも
     季節の巡りに身を委ねている
     怖れることはなにもないのだ
     あなたが通った道ならば
     わたしは歩んでいける
     ひとりでも







     
     


自由詩 錆びたベンチ Copyright 石田とわ 2016-02-22 23:53:07
notebook Home