冬のうた
Lucy
ある時
私は気がついた
私は
鳥ではなかったと
羽ばたき方も
囀りかたも
思い出せない
確かに
飛んでいたはずなのに
しなやかな翼に風をはらんで
束の間の夕焼けに
淡く染まったあの冬空を
胸に込み上げる思いを
高い梢で歌っていた
日が暮れて
枝につかまるやり方も忘れ
地面に横たわったまま
来るかもわからない朝を待つ
気付かなければ
あのまま鳥でいられただろうか
飛んでもいないのに
飛んでいると思い込み
歌ってもいないのに
歌っていると思い込んでいた
あの日々に
愛してもいないのに
世界を
愛していると思っていた
愛されていると
信じていた