ドリフターズ
餅月兎

ドロリ
ケーブルの中 濃密なインクが運ばれてゆく
末端で待ち受ける 退屈なひとたち 忙しいひとたち
虚無となれ合うための儀式
みんなハイになってる


眠れない 闇の一隅
不思議な薬がまわってくる
嘔気のまにまに 分解されて 微粒子レベル
サイズは紺 限りなく黒に近い けむり

虚空に漂い 交じって虚空

星のまたたきのあいだに
弾丸よりも速く

エーテルが
真綿にしみ込んでゆく
スクリーンという名の世界がゆらめく

明度ゼロの
暗い炎が
あちこちで上がる 燃えさかる
ぼくたちの


文字を忘れたぼくたちは
都市の中で
世界の首都で
金属を使い
水を使い
土を使い
獣の骸を使い
つたえる きく つむぐ つなぐ たすける うむ あいする ころす
そして
暗い炎の中で
踊り続けて 

月の影を映す海の上で
果てしない赤土の荒野で
天に向かって聳え立つ氷の墓標で
静かに火をつける
そうしてぼくたちは何もかも忘れてゆく

星のまたたきのあいだに
弾丸よりも速く

エーテルが
真綿にしみ込んでゆく
世界という名のスクリーンがゆらめく

暗い炎が
何もかも焼き尽くす



自由詩 ドリフターズ Copyright 餅月兎 2016-01-30 11:37:20
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