薔薇とハナムグリ
ただのみきや

ひとつの終わらない薔薇がある
幾重にも幾重にも
内面から開き続け
外側の花弁が枯れて
次々と散り落ちても
秘められた未知なるものが
沸き上るように 艶やかに捲れ
芳醇な色香を放ち続ける
尽きることのない炎の源泉


その渦の中心へ這いあがり
――身を捧げる
深く深く 沈潜する
膨張する銀河の根源へ
いのちの秘密を嗅ぎとり
その甘露に酔いしれる
終わりと始まりの使者として
溢れる色彩の波を越えて
ただ一点へとダイブする


歓喜の時は溶けて往く
柔らかな花弁に飲み込まれ
聖絶の匂いに溺れて喘ぎ
夢幻へ堕ちて 弛緩する
――打ち寄せる花びらの波
色彩を変え 匂いを変えながら
薔薇は静かに爆発を繰り返し――
染み入る冷気に目を覚ませば
今にも枯れ落ちそうな外縁にいた



         《薔薇とハナムグリ:2016年1月2日》






自由詩 薔薇とハナムグリ Copyright ただのみきや 2016-01-02 20:03:09
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