冬の裂傷
ふるる

君が手をあげて
頬を打った、訴えた、ギミミミ ミ
海峡も凍る、冷たい身体
薄い刃
三本の裂傷
赤どくんどくんにじむ、さいなむ、

閉鎖した屋上から落ちる夢さえ見せない、見せてくれ、ない、
校内、裏放送、果て、しない雑音
理科室は青白く燃え崩れ、吹雪のようにかすむ階段
トルソーが落ちてくる、まち針をあちこちに刺され、たまま、
そして雪崩れる、ただれる音楽授業
振り上げた、教師の唇はひび割れ、ギミミミ ミ

無、意味、いみ、
その傷からほとばしる、知る、痛みは美しい、
響きだ光だ幻だ
き み に
見えるかいあの、冬の鉄鎖に縛られた白い足首、
もつれからまる足を触る手首に光る三本の裂傷
赤い美しい綺麗だそのまま
保存して公開して拡散してデータベースに濾過され   

忘れられる

忘れられるわけがない、
聞いてしまった
ふやけきった耳が漬けられたホルマリンそのまま
保存して叩きつけびしょびしょにして
して?
しないよ
できるわけがない

ギミ、ユア、
そらせた首筋開け放つ唇から漸化式
数列により締め付けられる身体
そこから抜け出すパターンを探る、
君の波動はiにより完全な円に閉じられ救われ、る
虚数が救いとは何という素晴らしさ
探しても探しても見つからない、わけだ

翼はいりませんかわりに
僕の両腕を鋼鉄にして下さい

生きててもいいの?

いいさ

君だけは
ユア、
すくわれて当然だよ僕の両腕で

何故?

間に合ったんだよ

朗読なんて卑猥なことが日々蛮行され
判を押したように抵抗する彼らに耳を貸すな
ふさいだ耳から溢れ出すサイレン
僕が君の身体にめり込んでいるのは気のせいだろう
君が産んだのは僕ではない人の容をした叫びだろう
うなだれてしらじらしく
意味もなくしかし
君の赤い唇は二度と閉じられないそれは

ギミ、
傷口

凍てついた
冬の裂傷






自由詩 冬の裂傷 Copyright ふるる 2015-12-29 21:13:44
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