白い世界
ヒヤシンス


 私の机上で白バラが咲いている。
 窓の外では白い雪が降る。
 壁に掛かる絵画には白鷺が息づいている。
 この世は白いと初めて感じる。

 透明だと感じていたものが全て白になる。
 娘が思春期を迎えようとしている。
 彼女がポツリとつぶやく。
 サンタさんって本当はお父さんなんでしょ。

 これが最後になるかもしれないと思いつつ、
 精一杯の優しさと愛おしさで娘を抱きしめる。
 彼女の静かな吐息が白く目覚めるようだ。

 この世の全てを白く染めたい。
 純白のキャンバスに娘は色を重ねてゆくのだろう。
 あと少し、ほんの少しこのままで、白いままでと願う。


自由詩 白い世界 Copyright ヒヤシンス 2015-12-19 04:57:19
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