展覧会
鷲田

苦しみは夜のネオンに芽生え
朝の日常に消える
そうして透明な世界は回ることができる

迷いは夜の闇に映えて
朝の陽光に存在を消す
そうして各々の生活が回り始めることができる

一人の人間の感情は世界には映らない
社会は構図された機械で
歯車を回すのが人々の役割

感情は寧ろ
脳裏の狭間に泳ぐ
イメエジされた抽象画
私達はそれを表情と言葉を通じて鑑賞している

一つの抽象画は
多くの物語と多くの理由を抱え、描かれている
それらの一つ一つの画が
人間の持つ代わりのない個性

悲しみや苦しみは悪ではないのだ
それは例えば緑色の渦巻きであり茶色の鋭角
喘ぎや嘆きは虚ではないのだ
それは例えば赤色の楕円であり黄色の線形

ガラスの響きを繰り返し鳴らし
歩んでいく人間と感情が一つ
人はか弱く力強い
人は繊細で鈍感だ

無数の展覧会が開かれる都市の中
ある日の夜の闇 
ある日の朝の光


自由詩 展覧会 Copyright 鷲田 2015-12-15 22:57:25
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