ザクロのように
オイタル

昼下がりの雨の中で
ザクロが割れる
唇に指を立てて
ぼくは泥を踏んで歩く
それから 傘を振る

とても暑かった(その部屋は)
死にゆくものも
生き行くものも
ひどく暑い
後ろの席で誰かが身じろぐ
遠くの席で誰かが咳き込む

お前は なかない
妹が 泣いている
お前は わらわない
妹が 笑っている

妹は
目を開いて立っている
後悔したり
決心したり
忘却したりしている
大きな大きな 水盤が空に浮かんで

昼下がりの雨と
雲間から放たれた 汚れた陽射し
お前はすでにすべてのものから等しく遠く
お前はすでにすべてのものすべてと
およそ近しく

やがて
夕暮れの陰 水盤の上
お前は開いていく
ザクロのように



自由詩 ザクロのように Copyright オイタル 2015-12-04 23:38:55
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