20分の儀式
ユッカ

天気予報を見ると、日本のどこかに雪のマークがついている。ツンとした空気の真ん中で、息を吐く。するとその音が思いのほか大きくて驚く。あったかい毛布を肩にかけ、音楽を聴く。ロックを。できるだけ明るいロックを。目の前に食卓がある。空になったふたつの器がある。空洞がある。わたしに似ている。

金曜日の朝に、この欠落を捨ててしまいたい。でも捨てられない。ないから。この唐突な感情の空白を、なんと呼んだらいいのだろう。寂しさなのだろうか。いつか親と眺めていたテレビは、今も遠い土地の同じ部屋で、あの日と同じ音量でニュースを流しているだろう。ガヤガヤとしたいくつかの声。それを遠い波のように聞く。りんごの甘さとお味噌汁のしょっぱさ。時計の音がするだろう。その時間の四角さは、どこにいても大して変わらないと思えた。あの日の丸まった子どもの背中を、今の丸まった背中で見つめている。十年の朝が横たわる。今。イヤフォンをはずし、この途方もない白さを聴く。あと、もう1分だけ。


自由詩 20分の儀式 Copyright ユッカ 2015-11-26 22:33:29
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