天狗の望遠鏡
蒼木りん

勉強する気になれなくて

大名倉山のことを考えていた


発破をかけられて崩されて

晒された山の肌に

白い煙がかかる

山から砂利を運搬する音が聞こえる

ガッタンガッタンガッタンガッタン...


閑な昼下がりにはよく聞こえていた

あたりまえの音


縫い物するばあちゃんがいた

庭にはじいちゃんの植木たち

猫が畑でこっそりうんちして隠す


頂上には電波塔

街が見下ろせる

そんな家も見下ろせる

天狗の望遠鏡があれば


誰か連れて行ってくれないかな

細い轍のあの道も

舗装されているといいな


高速道路も見える

見たことのない人たちが

たくさん来た

私はバイトで桃を売っていた


そういえば

もう何年も蛇を見ていない

蛇ノ鼻の池には

巨大なおたまじゃくしがいた


山は怖いところだよね

もう3時だよ


ガッタンガッタンガッタンガッタン...が

ここでは聞こえない




未詩・独白 天狗の望遠鏡 Copyright 蒼木りん 2005-02-18 14:51:23
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