11月の雨
鷲田

秋という服が来訪した
木陰の脇からは紅葉が芽を出し
人々は山へとその景色を見に行く

楓が道に落ちている
秋とはそういう季節だ
物事が落ちるのが似合う季節

店頭の様相も変わった
街は都会の雑踏と運命を共にし
人々はカオスの中に自己の物語を捨てていく
灼熱の太陽はもういない

夏の孤独、夏は孤独だった
未来への渇望は乾いた過去を呼び戻し
私は10年前の記憶に犯された

喘ぐ部屋の中
幾つもの声が封印された空間で私は昔を落書きした
言葉を壁に語りかけ
現実という現象を明日と名付けるため

私の夏はどこに落ちたのだろう
11月の雨と共に幻想の中に消えたのだろうか
何も言わずに
ただ道端に

この季節に涙する孤独
11月の雨は今日も何も言わない


自由詩 11月の雨 Copyright 鷲田 2015-11-20 22:19:27
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