生爪
春日線香

剥がしてしまった
と思った時にはもう手遅れで
たらたらとこぼれさってしまう
葡萄の汁が点々と畳を汚し
部屋中をさまよい歩いて
どこにも行き場がない
指先を口に持っていき
吸いつづければいつまでも吸える
そのような暮らしがあり
誰もかもが多量にこぼれつづけ
来ない助けを待って
静かに干からびていく
爪のない指がそっと首を締めて
あなたがた全員を眠らせる
揺れる時計の振り子も
いつか腐れ落ちる


自由詩 生爪 Copyright 春日線香 2015-11-08 05:40:31
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