冬のはじまり
葉leaf




冬はなりたての死刑執行人
このぎこちない朝に
辺り一面に自らの恐怖をこぼしてしまう
例えばそれはつめたい雨のしみとして路上に
例えばそれは朝日の顫動として線路の途上に
世界が沈黙するとき
世界と接するためには等量の沈黙が必要である
世界が凍っているとき
世界に交わるためには等しい低温が必要である
朝はいつまでも夜のようで
信号が不吉ににじみ出している
人はみな生も死も忘却して
生きても死んでもいない
透明になった人々を
死刑執行人はひたすら打つのだ
そして打つ手はすべて空を切る
冬の死刑はすべて失敗する
失敗することで罪びとに
生殺しの耐え難い快感を与える
罪びとになる資格は
この朝を目撃したという
ただその一点に集約される


自由詩 冬のはじまり Copyright 葉leaf 2015-11-03 06:23:12
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