あとの祭り
春日線香

座敷を貸してくれというので
貸してやったら
ずいぶんと荒らされてしまった
土まみれになった畳を
泣く泣く雑巾で拭いていると
おまえがいつもそんな風に
下手に出ているからつけこまれるのだ
などと言って
口からとろとろと油を流しこまれる
火などつけられたらたまったものではない
平謝りに謝って
ここはなんとかおさめてくれませんか
取り返しのつかないことになります
と口の端で唱えると
相手もそれはそうだとわかったようで
でもきっちり落とし前だけはつけるからと
畳を踏んで帰っていった
ぐしゃぐしゃに汚れた畳を見つめて
これが落とし前というものか
泣いているうちに夜になり
やっと思い出したのだ
生前からずっとこうだったと


自由詩 あとの祭り Copyright 春日線香 2015-10-25 22:26:52
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