ささくれ
あおい満月

風の車内に、
弾丸が飛び交っている。
女の鋭い視線に、
私の眉間は打ち負かされる。
ここでは、
誰もが皆、
小さなスライド硝子のなかに弾丸を隠している。
ある男は弾丸を飼っている。
指で器用に操りながら、
鋭く見えない毒を増やしながら、
架空の餌を与えている。
一つずつ、
弾丸が肥えていく。
スライド硝子に収まりきれなくなった弾丸は、
硝子を突き破り、
呼吸する誰かの肺の中に飛んでいく。



目が覚めると、
足跡で埋め尽くされた部屋にいた。
白くカビた足跡が
壁の肉を蝕んでいる。
遥か彼方から、
怒濤が聴こえて、
津波が押し寄せる。
私はスクリューに巻き込まれて、
風の外に出る。

**

種類をいくら増やしても、
襲われる人間は沢山いる。
投与と抗体構築を繰り返しても、
皆、熱におかされていく。
弾丸の使命は絶滅だ。
風のなかの弾丸と
人類との戦いは、
人類滅亡以外終止符はないのか。

指のささくれを剥いた
僅かに滲む血から、
弾丸の胞子が付着する。
私の呼吸がかぶれ、
縮れて声にのって破裂する。
新たな絶滅を帯びた弾丸が、
誰かの肺の中へと飛んでいく。



自由詩 ささくれ Copyright あおい満月 2015-10-22 21:39:13
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