旧・青少年非行団の歌
ただのみきや

ナイフを手に入れろ
くすんだ景色を切り裂くために
ほら こんなに青く 世界は
青く燃えて たゆたい――

ナイフで胸をえぐれ
にぶい痛みを消し去るために
ほら こんなに紅く おまえは
紅く乱れて 叫び――

凌ぎあいながら混濁して往く
むらさきに 跳ねる痛み
つたう ふるえの糸だけが 
結ぼれた現実とおまえを繋ぐ

疑う前に信じるな
大人たちがこれ見よがしに
紐でくくって宙づりにした
タブー ひとつひとつ解き放って

飛ぶことのできない純白の羽毛なら
残らず抜き捨ててしまえば良い
それは誰かが植えたもの
おまえから生えた言葉じゃない

裸をさらして震えて歩け
しっとりと濡れて膨らんだ
闇と光の八重一重 焦がれて鳴いて
まだ見ぬ失くした欠片を求めて

少年よナイフを握れ
現実を越えた現実へ変転する
鍵穴を回す言葉を探して
この痛みだけが正気の証

――飛べ 真っ逆さまに



       《旧・青少年非行団の歌:2015年10月21日》






自由詩 旧・青少年非行団の歌 Copyright ただのみきや 2015-10-21 21:23:11
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