渡り廊下
春日線香

新館と旧館を繋ぐ渡り廊下が
道路の上にかかっていて
それをくぐって行った先が海です
わたしたちが着いた頃にはもう真っ暗で
大急ぎで荷物を運び入れ
各々の部屋に落ち着いたのでした
厨房の火は落としたとのことで
申し訳ないが食事は出せない
そう聞いたので商店で買うことにして
あらためて出て戻ってきたところ
頭上に伸びる暗い渡り廊下で
もう電気も落ちていたのですが
なぜかそこだけ鮮明に
髪の長い人影が立っているのがわかって
よく見ると着物姿の女が一人
ぽっかりと空いた眼窩で
わたしを見下ろしていたのでした


自由詩 渡り廊下 Copyright 春日線香 2015-10-19 18:39:37
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