夏空の泡、珊瑚の恋、歌薫る
花形新次

縁側で
冷やし飴を浴びる

私は全裸
少しブスの全裸

殿方が
冷やし飴を
啜りに来ないかと
待っている

膝を立てて

殿方の代わりに
来たのはカナブン

カナブンが
乳首に停まって
冷やし飴を
ブラシの口で
吸っている

私はカナブンのママ
カナブンママ
でもカナブンママなんて
一時

夏は泡のように
はじけて

相手のいない恋は
永遠に始まらないの

それがブスの
せいだとしても

悔いはないけれど

冷やし飴を
いいえ、すべてを
洗い流すために
海へ入る

「イテッ!」
珊瑚を踏んだ
無防備な素足から
血が一面に広がる

その血が薫って
イタチザメが
近寄って来る

「いいじゃない、いらっしゃい」

私はありふれた歌を
口ずさみながら
イタチザメに
半身を喰われる



自由詩 夏空の泡、珊瑚の恋、歌薫る Copyright 花形新次 2015-10-05 22:09:31
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