深み
葉leaf




年度の途中で他の課に異動し、2か月ほど経った。新しい課の職員と互いに腹を探り合いながらも、その腹の探り合いの中ではぐくまれる親しみがあり、いつしかそれは互いの気遣いに変わっていった。私も少しずつ仕事を任されるようになり、異動にまつわる様々な周囲のざわめきによる苦痛もだいぶ減って来たところで、秋は深まっていった。
私は今までになかったかのような疲労を感じていた。それは何か、世界の枢要な原理とともに自らが狂っていくかのような、自らの身体を超出した疲労だった。世界において微妙な狂いが生じ、その余波が伝わって来たかのような疲労だった。もちろん、環境の変化による疲労といってしまえばそれまでだが、それでは言い尽くせない独特の深まりがあった。疲労とは溜まるものではなく深まるものなのだ、と私は初めて思った。
朝が始まるのもだんだん遅くなり、夜が始まるのはだんだん早くなる。大気は徐々に冷えていき、樹の葉は少しずつ色を変えたり生気を失ったりしていく。光はどんどん鋭くなって行き、それとともに密度を増していく。秋はどんどんと深まっていくのだった。秋は病の季節だ。世界の原理の狂いが伝播していくことによって秋の自然界は変化していく。
私は新しい環境に疲労すると同時に、この秋の深まりと同期して疲労を深めていった。世界の枢要な原理は明らかに狂い始めていた。その亀裂から広く伝播して世界を覆うものによって、私は秋が深まるのと同じ原理でその疲労を深めていったのだ。秋が果てるとき、私の疲労もまた果てるだろう。そのとき、世界の枢要な原理は再び整合性を回復するのだろう。


自由詩 深み Copyright 葉leaf 2015-10-04 12:55:21
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