【HSM参加作品】今
黒髪

何も知らず
生きるものは
少しだけ
優しくしてほしかった
もう少しだけ

知識が劣っている間に
とんでもない命令を
自分の責任ではないことを
押し付けられているようです
そもそも無責任なのは神輿担がれた親玉でしょう
四民平等の精神は知らないけど
それは担がれた神輿の上の人の為語られたことではないでしょう

「その」時「今」という現在傷つくのは誰でしょう
狙いや目的
何も隠さずごまかすことなく

今はやがて過去になり
死はやがて風化していき
孤独な風は風洞を鳴らして
もう誰も知らない世界に
ただ誰かを想いながら生きたかった存在は押し込められるのでしょうか?

私の目覚めを
思い知るがいい
ペンはペンはペンは
テレビ画面の中に向けてさえ書き記せるものです
思うさま過去を書き換え
私の唯一の願いを知らない人が
願いがないかのような麻痺をかけて
手術するのですか
世界の中に見つけたガンを
そのように免疫系な異常をきたしている世界を

人が何のために生まれてきたか
屋根を叩く雨音は誰かが泣いている音に聞こえるのです
ドラム缶の中のたき火が暖かく
狐の買った手袋が温かく
僕のもらったたった二通の手紙の筆跡があたたかい
人間の想像力を守るなら
本当の答えを望むなら
焦ることはないのですよ
あと十年かけてやるべきことを探しましょう
何を焦っているのですか
「今」に「その時」という号令をかけても
「その時」はまだ来ていない未来を先取りしているから
方針を決めるときこそ「今」自体なのだから
足跡を残しながら歩み続けて「今」は「その時」から遠いことにやっと気づいた
「その時」というのは無限の過去を現在化するものだから
「今」は「その時」からはもたらされない
いま「今」と口にできる
その時「今」とは口にできない
その時にはすでに壊されるしかない
「その時」という未来に勝利と配慮を希望するとき
失われた「今」は取り返しのつかない現在として恨みを吐き続けるでしょう
人が何のために生まれてきたか


自由詩 【HSM参加作品】今 Copyright 黒髪 2015-09-30 22:18:08
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