あたしの平和
藤原絵理子


気まぐれな風が 鏡の水面に木の実を落とす
広がる波紋は 臆病な栗鼠の目に少しの不安を
それでも 冬支度の手を 休めることなく
すぐに静まって 平穏になるとわかっているから


羊飼いの少年は 家路を急ぐ
逢魔が時には 故郷を失くす気がして
緩やかな 草原の丘を越えたとき
眼下に 灯ともし頃の村を認めて ほっとする


壁の中の世界は秋 実った麦が風に揺れる
子育てを終えた鴨は 得意げに川面をすべる
季節はいつもの時期に 決まったものを配して


群れからはぐれた羊は 空を見上げる
夕陽を追いかけて 銀色に輝く戦闘機の
飛行機雲は真っ直ぐに 壁の向こうで戦争が始まる



自由詩 あたしの平和 Copyright 藤原絵理子 2015-09-24 21:11:24
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