雑踏に
藤原絵理子
季節は容赦なく 黄昏を早める
暮れなずむ街頭に キャバクラの呼び込み
ラインを際立たせる タイトなミニのワンピースで
道行く仕事帰りの おじさん達に声をかけている
下心に乗っかって 照明は押さえ気味に
下らない自慢話を聞いて 気分良くしてあげる
マジで口説いてくる男は 上手にあしらって
上玉の顧客に仕立てあげる
そんな生き方も あったのかもしれない
死にゆく人に 寄り添えもせず 見送るだけの
悲しみを日常化させることに 汲々とするよりも
雑踏で立ちすくむあたしに 向けられた
彼女の怪訝そうな視線に 追いやられて
駅に向かう 立呑み屋の煙が追いかけてくる