雑踏に
藤原絵理子


季節は容赦なく 黄昏を早める
暮れなずむ街頭に キャバクラの呼び込み
ラインを際立たせる タイトなミニのワンピースで  
道行く仕事帰りの おじさん達に声をかけている


下心に乗っかって 照明は押さえ気味に
下らない自慢話を聞いて 気分良くしてあげる
マジで口説いてくる男は 上手にあしらって
上玉の顧客に仕立てあげる


そんな生き方も あったのかもしれない
死にゆく人に 寄り添えもせず 見送るだけの
悲しみを日常化させることに 汲々とするよりも


雑踏で立ちすくむあたしに 向けられた
彼女の怪訝そうな視線に 追いやられて
駅に向かう 立呑み屋の煙が追いかけてくる


自由詩 雑踏に Copyright 藤原絵理子 2015-09-13 21:13:22
notebook Home