白空
凍月


景色が青で満ちていた
空気が青色をしていた時間
海と空と液体酸素
この世に青は多いのに
人間は青を憂鬱にしたから
青い憂鬱が僕らを包み込む
溜め息
美しい景色に ふっと
窓が曇り掠れて
深い海の底が雲の向こうにあって
紅の夕焼けを経て
世界は僕らに何も与えない
ただ夜になって
鈴の音が満ちる
星も月も塗りつぶされた
黒い黒い視界
遠雷だけが一瞬の灯台
轟きすら届かない彼方
黒には奥行きがある
目を閉じた
そこにある
眠る
早朝の大気は澄み渡る
そう感じるのは冷え込みの所為か
やんわり橙な太陽
薄い
のち曇り
のち細雨
僕は目を凝らさないと見えなかった
白い風景
白い雨は背景に溶け

空に奥行きを感じられなくなった
白い
白いから
紙に包まれ制限された空
空白
白空
乾いた覆いは落ちてしまいそうだ
宇宙は黒いのに
空白はやはり白いのか



黒より白が怖くなる
降りしきる雨は音もなく





自由詩 白空 Copyright 凍月 2015-09-10 21:29:43
notebook Home 戻る