こらえれば海路の日和あり
そらの珊瑚

 左手にヘアアイロン、右手にスマホ。高校生の娘は朝の忙しい時にも、そんな習慣を欠かさない。前髪がそんなに重要なのか、ラインでどんな大切なメッセージがあるのか、聞きたいところだが、朝から言い合いたくないので、私はぐっとこらえる。
 週末にある弓道大会のために、このところ部活が忙しく、娘の帰りは夜9時をまわっている。悲鳴を上げ始めた左手にこの数日は湿布を欠かせない。本人が好きで選んだことだけど、そんなハードな生活ってどうなんだろうか(夏休みは三日ほどしかなかったし、もちろん土日も休みはない)と言いたいところをぐっとこらえる。
 娘は、もう食べるくらいしか楽しみがないと言って、夕食を腹いっぱい食べたあと、宿題をしながら菓子やらアイスも食べ尽くす。それなら痩せたいと言うなといいたいところを、またまた私はぐっとこらえる。
 このところぐっとこらえることばかりだ。

 娘の同級生が新学期ずっと欠席だという。(ちなみに新学期は8月の終わりの週から)そのことについて詳細が書くことは控えるが(私が知った情報が本当に正しいのかもわからない)一言でいえば、ドロップアウトしてしまったらしい。
 こらえることばかりの時間が嫌になって爆発してしまったのではないか、などと想像してみる。
 尾崎豊は死んでしまったけれど、君は生きていってほしい。誰もが生きづらさを感じながら、生きていてよかったと思える日が来ると、私は信じている。


散文(批評随筆小説等) こらえれば海路の日和あり Copyright そらの珊瑚 2015-09-04 10:39:54
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