秋色夜曲二 <虫の鳴く夜に>
南無一


飲んだくれたって いいでしょ?
だって 人間に 生まれてきたんだもの
たまには 飲んだくれたって いいですよね
虫なんかに生まれたなら
夜中じゅう ただ鳴いていなきゃなりません
それか勤めなんですもの

人間だって 辛いのです
毎日 毎日 朝早く起きて
電車に揺られて 会社に行かなきゃなりません
だって それが人間というものですものね
だから 土曜の夜ぐらい
酔っぱらったって いいでしょ?
ゆるして くれますよね

たぶん ぼくが 虫だったら
一所懸命 徹夜で鳴き続けます
だから 人間として生まれた時ぐらい
たまには 酔いつぶれったて いいでしょ?

鳴き続けなきゃならない虫も大変でしょうが
人間として生きるってことも 辛いのです
その辛さを 酒でごまかしているのです

虫が鳴いています
虫が鳴いています
開けた窓の下の草叢で
しずかに かなしく 虫が 鳴いています
いつやむこともなく 鳴いています
ぼくは ただ酔っぱらっています

もう 秋も まじかです



自由詩 秋色夜曲二 <虫の鳴く夜に> Copyright 南無一 2015-08-30 21:00:26
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