雨中コミュニケーション
たけし

秋雨、降り続く夜
傘もささず
両手広げて
瞑目し歩いていたら

「君は独りで何をやっているんだ?」

巡廻中のおまわりさんに呼び止められ

「や、なんか情欲が芯部から噴き上げて身体が火照るので雨浴びて冷ましてました」

僕がそう応えると
しばし僕の顔を凝視してお巡りさん

「君、変なことしてないでさっさと帰りなさい」

疑わしそうな顔で言う

「気持ち良いですよ、邪念浄化!お巡りさんも良かったらご一緒に」

けれどせっかくの僕の好意の言葉を無視してお巡りさん

「あなた、酔っぱらってますか?」

「ははは、はい、部屋で音楽を聴きながら4時間ほどウィスキーを。疼痛が麻痺するので」

そう僕が応えると少し和やかな声音になって

「疼痛?ご病気ですか?それにしてもそれはかなりだ。きょうつけてお帰り下さい、ここは街道沿いだし危ないですよ」

幾つくらいの人だろうと自転車の上の彼を見つめたが
ちょうど街灯の影になって解らない

たぶん声からすると自分と同じくらいだろう

「雨の中、ご苦労様です!」

掌を右側頭部に当てて僕が真顔で敬礼すると

「面白い方だ」

彼は笑い出しながら軽く敬礼を交わし
我々は別れた


自由詩 雨中コミュニケーション Copyright たけし 2015-08-29 22:02:50
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