盆の歌
藤原絵理子


浴衣の帯が苦しくて 不機嫌な顔をしていた
それでも金魚の袋は しっかり握って
夜店の光が届かない 闇の狛犬が怖くて
握った手に力が入った 小さい弟の小さな手


田舎の家の 広い居間で
大人たちが集まって 談笑している
静かなざわめきを 子守唄の代わりに
うとうと 夢見るのが好きだった


ゆっくり回る 走馬灯
影絵の馬は 黄色い目
線香花火は 小さな太陽


この世を去る直前に きっと思い出す
優しかった人たちの 笑顔の匂いと
わけもなく楽しかった夜 遠い夏のことを



自由詩 盆の歌 Copyright 藤原絵理子 2015-08-25 23:35:51
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