寵愛
青井


あなたがぼくを愛してくれるので
ぼくはここに生きていられる
そしてまた同時に
いつ死んでも構わないと思えるのだ
心の底から

愛は蒼穹の奥に実り
愛は深海の闇に茂る
愛は春先の風に戦ぎ
愛は嬰児の指に絡む
世界はいつも愛に満たされている

故も無くあなたは総てを愛する
ぼくらはただ土竜のように
鼻先でその愛を弄る
世界の細部を紡ぐあなたの優しい指使いを
疾うから盲いた瞳に映して

愛は永遠の眦に浮かび
愛は刹那の爪に斃れる
愛は恩寵の朝に芽吹き
愛は静寂の夜に滅びる
世界は愛より生まれ愛へと消えていく

あなたがぼくを愛してくれる限り
ぼくはここに生きることを誓う
しかしまた同時に
すぐにでもあなたのもとへ死に行くことを願うのだ
心の底から


自由詩 寵愛 Copyright 青井 2015-08-24 22:11:15
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