顔のうらがわ
服部 剛

右手にもったきゅうすを傾けたら
青い湯飲みの底に花が咲いていた

一瞬にして
そそがれた緑のまどろみの下に
花は消えた

この湯飲みで
数百杯の茶を飲んでいるというのに
知らなかった

日々出逢う人々の
あたりまえの表情をひっくりかえしたら
それぞれの花びらが
まどろみをこえて放つ
小さい光に

「はっ」

とするのかもしれない



    * 初出:同人誌「母衣」2号





自由詩 顔のうらがわ Copyright 服部 剛 2005-02-13 19:29:33
notebook Home 戻る