メモリーモーテル
ヒヤシンス

 散財につぐ散財でまったく有り金がなくなった。
 ギターすら売っちまった。
 あとにはおんぼろの車と愛すべき彼女だけが残った。
 友達への借金も残ったままだ。

 そんなある日彼女を連れて海を見に行った。
 ちょうど海岸線に出たところで、カーラジオから流れてきたのは
 メモリーモーテル、俺の愛すべきストーンズだ。
 彼女はしばらく聴き入って、良い曲だねと言った。

 俺は当たり前だ、ストーンズなんだからと答えた。
 俺の場合、ストーンズの名盤BLACK AND BLUEは海に似合う。
 特にこのメモリーモーテルは別格だ。

 彼女は窓の外をぼんやり眺めていた。
 ストーンズをもっと知りたいな、彼女は言った。
 その一瞬間、俺はこの女を一生大事にしようと決めたんだ。


自由詩 メモリーモーテル Copyright ヒヤシンス 2015-08-15 05:36:12
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