真昼 みさき
木立 悟





骨のような岩壁をくり抜き
むらさきの斎場が作られていた
川底には黒い鉱がつづき
岩を二重に映していた


   うれしさはすぐに悲しさになり
   頭のなかには茎がひろがる
   葉と葉のはざま
   光の無い星にも
   生きものは居て空を見つめる


窓の奥の灯
硝子の目
化石の壁が
海と街を隔てている
止むことのない波の音が
生きものの音と混じり合う


   現実と何も変わらない夢
   思い出せない夜と夕べ
   現実以前の現実を
   夢のように忘れてしまう
   ひとつの指より近いまたたき


斎場の上の崖から海へ
人工の風が飛び降りてゆく
真昼は夜を褒美にもらい
曇のなかにしまい込む


   出たり入ったりしながら
   葉と星は話している
   頭の上の風を撫でながら
   川が流せないでいる
   もうひとつのむらさきを見つめながら





















自由詩 真昼 みさき Copyright 木立 悟 2015-08-13 10:51:02
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