母の願い
南無一



昨日、犬を 殺してきましたと
あなたは言った。

あまりにかわいそうなので
殺しましたと。

母以外の他人には けして 懐かない
犬でした。

夏には きゅうりを丸齧りしていた
犬でした。 

明日は、自分が死ぬ番だ。
そしたら、犬の骸と一緒に 焼いてくれと
あなたは 言った。

それから三年、母は長生きした。

墓地のかたすみに埋められた 犬の骸は
すっかり骨になったろう。

あの日に母の願いは、叶えられなかったが
今日、母と犬は、同じ土に埋められた。




自由詩 母の願い Copyright 南無一 2015-08-06 22:13:31
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