戴冠夜
木立 悟






ひとつの金属が鳴り
かけらのように冷えてゆく
響くことなく かがやいてゆく


背中を押す手が
ふいに昇る
何本かの指を
残したままで


声を映す手鏡に
映るのはただ雨ばかり
鏡の声も 手の声も
雨の声に流されてゆく


風のなかの冷たい粒が
わずかにひらいた窓にたまり
壁にこぼれ 消えてゆく
灯と鱗を縫いながら


熱は青い骨に昇り
指は戻り 鏡からこぼれた声を拾う
直ぐのはずの径は曲がり
曇はさらに行方に刺さる


水色の空と低い声が
どこまでも途切れることなく
夜の向こうに立ちはだかり
冠の内側を巡りつづける






























自由詩 戴冠夜 Copyright 木立 悟 2015-08-03 19:27:35
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