しょうがない日本政府の遺伝子
イオン

太平洋戦争を終わらすため
日本への原爆投下は「しょうがない」
二〇〇七年六月三十日に
日本政府の防衛大臣はそう言った

原爆投下は、日本を降伏させて
ソ連の参戦を食い止めるために
あり得る選択肢で「しょうがない」
日本がドイツのように
東西に国家分裂せずに済んだという事が
発言の趣旨である

しかし、見せしめとして
原爆投下は有効であったと
暗に語っていることになり反感を買った
これは、アメリカ側の見方の一つを
紹介したに過ぎないとの擁護もあったが
防衛大臣の立場での発言である
世論から辞任に追い込まれた

この日本政府の
しかも防衛大臣の発言は
福島県会津で生まれ育った私には
戊辰戦争を終わらすために行った
会津への見せしめも「しょうがない」と
言っているように聞こえた

一八六八年秋に会津戦争は終決した
もし会津側が勝利していたら
日本はこの時点で
東西に国家分裂していたであろう

明治新政府は
武士達への見せしめだと
会津藩戦死者三千人の埋葬を禁じ
殺されて倒れたままの死体を
会津城下に累々と野ざらしにした
国家統一へ反抗勢力を抑えるためには
「しょうがない」だったのかもしれない

しかし、明治新政府は
鳥や獣に食い散らかされる死体を
見かねて埋葬した市民を捕らえて投獄し
せっかく埋葬した死体を掘り出して
元の所に野ざらしにしたのだ
埋葬許可が出たのは半年後の春
腐った死体から疫病が流行ると怖いからで
人道的な配慮からではなかった
明治新政府はその後も
戦場になった会津城下を三十年間
見せしめとして焼けたまま放置した

会津城下を見せしめにした遺伝子は
原爆投下されるに至っても懲りず生きている
それどころか日本政府は
二〇一五年に集団的自衛権を強行採決して
国民に「見せしめ」を行った

日本政府はあれもこれもそれも
「しょうがない」と言うのだろうか

明治新政府は偽の天皇の旗を作り
官軍になりすまして武士達を騙し
政権を勝ち取ったのもしょうがない?

明治新政府は官軍であり
会津は賊軍だと市民に言いながら
会津城下で市民の財産と婦女を奪いあげて
返して欲しければ金を出せと市民に要求し
自分の懐に入れたのもしょうがない?

そんな「しょうがない」を
積み重ねてきた日本政府だから
民主主義国家と言いながら
強行採決するのもしょうがない?

日本政府は度々
「戦後体制からの脱却」と言うが
私はその戦後とは太平洋戦争ではなく
戊辰戦争だと思う

脱却すべきは明治新政府の体制なのだ
日本政府のなかで明治新政府から続く
詐欺と盗賊の遺伝子を一掃しなければ
日本は再び「見せしめ」をされても
「しょうがない」と言ってしまうのだ


自由詩 しょうがない日本政府の遺伝子 Copyright イオン 2015-08-02 10:36:02
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