流骨
凍月
何となく波打ち際の香りを求めて
川沿いを下り海に出る
想像とは違う本物の音を聴く
現実そのままの懐かしい潮の匂い
だけど本当は
目的も無く歩く事だけが
僕の目的だったから
ゴミだらけの汚い海岸
だけど何故だろうか
いまはそれすら愛おしい
何が欲しかったのか?
安息が欲しかったのか
静けさを欲したのか
答えを欲しがったのか
目的は無かったはずなのに
いつの間にか何かを探していた
僕は白く乾いた流木を拾う
それは骨みたいだった
脆そうなそれで砂浜に線を引いた
一瞬
満潮か干潮か気になったけれど
無意味な疑問だと思い忘れる事にした
そう、何か記念が欲しかった
だから僕は拾ったんだ
骨みたいな流木を
一つの発想に至りついて
小さな満足を得て
ああ、残るものもあるんだな
って
ああ、なんて--
--下らない
折った。
真っ二つに。
馬鹿みたいに気の抜けた音がした
踏み砕いた
冷めたまま躊躇なく
何度も何度も
残骸を下水よりも澱んだ汽水域に捨てた
はは
笑っちゃうよね
なんでわすれていたんだろう?
残るもの?
ある訳がない
灰が残ったとして何になる?
僕は木じゃないんだ
骨も残らない
だからせめてもの慰めに
精一杯の抵抗として
流木みたいに残るものがあるとすれば
きっと骨じゃないと思ってるから
いつの日か
残る価値のある何かを創り出せるように
本当は
それすら消えると分かっていても
それでも僕は
こうやって詩を書いてるんじゃないか