音楽の効能
ただのみきや

スパイスと宝石の匙で
耳を穿られる

《誰の膝が欲しい?――

頭の中から始まる旋回舞踏
透明な花びら 光彩のミスト 
すぐに船内の浴槽が揺れるよう
隠れた海が押し寄せて捲れだし
突き上げる
衝動は抑え切れない
発火するリズムの群体

  踊りだすか詩を
  書きだすか踊り

音符と文字のあいの子
そんなに抱いて掻き鳴らすから
瞳のビブラート 波紋を纏った銀河   

《尖った唇が背中をすべり落ちて――

乱脈だ! 七色に枝垂れよ蝶よ蜂よ湧き上れ
心の臓に佇む静と動 旋律のひねられた姿態

  おれは閃光のフルート
  ベースうねる蛇

青白い鳥肌の群れは羽化し
薄絹の飛翔 柔和な死の門出にも似た
冷たい燐光

――だが語感は受肉する

しなやかな文字の舞踏
        濃い影の踊り




          《音楽の効能:2015年7月1日》







自由詩 音楽の効能 Copyright ただのみきや 2015-08-01 20:47:08
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