正直なところ大言壮語すれば
ただのみきや

家族や国を守るため
自ら志願し戦場へ行くと言うのなら
その人は行けば良い 後ろ指さされても
人殺しと罵られても

たとえ国家権力が徴兵しても
誰の血も流したくないと言うのなら
その人は拒めば良い 差別されようと
たとえ投獄されようと

信条を捻じ曲げ 心から血を流し
それでも未来に何かを繋ぐため
上手く立ち回るというなら その人は
負けずに背負って往けば良い 裂けた心も惨めさも

もし国家が自由に書くことを禁じたら
あなたはもう書かないのか

決めてほしいのか
自分の身の振りを権力に

保証してほしいのか誰でもない自分の自由を
小さな政治家たちに

時代の流れも世界の流れも変えられない
政策や政治家が変わっても
服を着替えるようなものだ
何もかもが上手くゆくことはない
何処かに歪みと軋轢が生れる

国民を守るのは
政治家か自衛隊か米軍か憲法か
国民が守ってやらねば駄目なのか
自分ひとりを守れないのに

あなたがあなたであることを
最後まで守ってくれるのは何か

本当にこの国の将来を憂いで腹を切るなら
黙ってひとり腹を切れ
人前でラッパを吹き鳴らすな

あくまで石を投げるなら
ひとりになっても投げ続けろ
あなたの反骨なら
群集心理に呑み込まれるな

政治的なことを声高に叫ぶのと
政治に参加するのは違う
投票するか立候補するか
まさか平和を求めてクーデターでもあるまいし
パンのためならいざ知らず

政治も外交も綺麗ごとではない
だが国会議員を選んだのは国民だ
こうなるとは思わなかったなんて
普段よほど興味がなかったのか
学者の反対で法案が決まる訳ではない
支持率で必ずしも辞任へ追い込める訳ではない
次の選挙のために彼らが自主的に見切りをつけるだけのこと
とにかく通すことだけ優先すれば
通るだけの議席を国民はすでに与えている

おれは政治には参加しない
政治を変えようとも
国を変えようとも思っていない
勝手なことを言い放つだけだ
本気で変えたい人がやればいい
目先のことだけでなく
絵に描いた餅の御題目を唱えるだけではなく
与党の言うことも野党の言うことも鵜呑みにしないで
外交や安全保障や世界情勢までよく学び考えて投票すれば良い

だが法案が通ろうと通るまいと
国の外では戦争もテロも侵略も続き
国の中では奇妙な犯罪と閉塞感が続くだろう
法案が通ろうと通るまいと
巻き込まれる時には巻き込まれ
その時には被害者も戦死者も出るだろう

争いと対立軸には事欠かないまま
黙示録の大バビロンさながら
市場原理とネットで一つに繋がれた世界

その日おれは法を守るだろう
あるいは法を破るだろう
戦うかもしれない
妥協するかもしれない
逃げるかもしれない
自分のコンパス 不文律の
しなりそよぐが木のように
根ざしたものと共に在って



         《正直なところ大言壮語すれば:2015年7月26日》







自由詩 正直なところ大言壮語すれば Copyright ただのみきや 2015-07-29 19:23:04
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