めぐり ひつぎ
木立 悟






たどりつけない浜辺に
たどりついたものが
ひとり花を詠んでいた
たずねてもたずねても
花は
名のることはなかった


花の後ろの絵を
忘れた
はじまる前の
世界の絵だった


夜の水をすくう手のひら
時計の音を浮かべている
未明へ未明へ振り向く白
壁の上につづく
首の無い群像劇


水が水から開放される日
羽のある虫は殺されて
葉の柩に流された
枝のはざま 枝のうた
空へ昇る水の光


海を巡る海の音
別の月が流れ着く音
苦難を乗せた舟の行き先
波を結ぶ暗い虹


指の刃で髪を切った
光は硬く地を刺した
花は水を詠む 羽を詠む
退けられても折られても
名のることのないままに























自由詩 めぐり ひつぎ Copyright 木立 悟 2015-07-28 04:24:00
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