すでに萩原でも日吉でもなく
ただのみきや

平家の怨霊に千切られたり

画家が自分で切り落としたり

耳だけになった耳は

視ざる 語らず

そばだてるだけ

集めつづけて

誰にも渡せない

にくの花弁の内がわで

オンやコトハは荒れ狂う

目にはブタがあるが

耳にはタブしかない

拒むことをゆるされないから

もまれつままれもてあそばれ

吹き込まれてしまう

やらしいコトハ

そぼうなコトハ

いきる者には聞かせられない

ひみつの黒いコトハ

くちびるよせて吐息とともに

舌でそっとねじいれ

濡 れ 囁 く

だれも愛さない男の

コトハだけの愛が

みみだけのみみと

どこにも到達しない

風のセックス



         《みみ――すでに萩原でも日吉でもなく:2015年7月15日》










自由詩 すでに萩原でも日吉でもなく Copyright ただのみきや 2015-07-25 19:14:27
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