湘南の幻
番田 


湘南へ向かう
電車に乗りながら
私は流れていく風景を見つめるでもなく
友達との話に 夢中になっている
こういった時間は
もう長くは持てなくなるだろうと思っていた
そして そうしようともいつのまにか思わなくなる
長い電車に揺られながら
そんなことを 考えていた
子どもの頃は
友達との話に いつも夢中だった
意味のないことを 興奮して話していたあの頃
あの頃見ていた 色々な夢の数々
それは しぼんでいく経済のように
気がついたら無くなっていた
そんなことを口にもできずに
人は誰もが大人になっていく
あれは 建前だったのだ
だけど 騙されていたのは他の誰でもなく
他でもない自分自身だった


帰り道の途中
私は疲れ切った友人と
土産屋に寄ってみる
綺麗にデザインされたパッケージの中身は
近所のスーパーでも買えるような作りのクッキーが入っている
そんな ちょっとした気持ちを 私も今日は買いたかった


自由詩 湘南の幻 Copyright 番田  2015-07-20 21:09:39
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