青と音
木立 悟
何かに咬まれた指を握り
真昼を渡り海岸に着く
砂浜には紙を追う鳥
波と共に現われ消える
海沿いの径に車は無く
皆ひとりひとり歩いている
砂の丘がつづいては途切れ
はざまから時おり午後が見える
短い光の会話のあと
水紋が幾つか影にひろがる
光は光に欠けてゆく
紙の鳥をついばむ鳥
波の頂は燃えてゆく
切り刻まれた息の端々
新たな飛跡 新たな径
いくら風が硬くなろうと
誰も帰ろうとしないのに
新たな青へと進むのに
紙の家が倒れ
鳥は群がり
紙も音も食べてゆく
砂浜の羽を
拾い集める背
海へ向かうものの列は止まず
陽は何処かわからぬほど高く
青はますます青く
鳥は集まり
音は消える