星合
あおば

            150707

メロンを皮が薄くなるまでガジガジカジル
安物の悲哀だけど、メロンの味がする
甘さが足りないのだと見えない星空にも
同意を求めるのだけど、我が星には
我が星の味があるから
地球の味に迎合は出来ないと
味も素っ気の無い返事が戻ってくるのではと
かなり弱気になっているのを
梅雨寒の晩には外に出るだけでも
ちょっとした勇気と上着が要るのですよと
初老の痩せた男が同意した

都会の真ん中
短めのスカートを穿いた男が
青竜刀で星と星とを真っ二つにしては
瞬間接着剤でくっつけているのが見える
たくさんのスマイルが見守るなかで
青竜刀だけがいつまでも半円を描いている
これは幻覚ではないのだろうかと
自問自答しながら、磯の巨石に座る
この位置ならば星々も良く見えるのだ
虚像のように聳える松ノ木が不動の座標を
与えているのだが、やる気の無い世界には
ただの松ノ木に見えるようで
眺望を妨げるから切ってしまえの声も聞こえる
なんという理不尽なことだ不動明王に言いつけてやると
僕は毎日思うのだけど
スカートを穿いた青竜刀が怖くて、
星空の見える海岸まで出かける
勇気が無いのです
翌朝
気の弱い流れの果ての巨岩を砕く重機の唸りだけが
枕元まで聞こえてくるというのに
ひとりだけでメロンを食べているのはなんという
自分勝手な男だろうと星々が噂する頃には
接着剤は完全に乾いてびくともしない
完成品のドローンのスイッチを入れ不動明王に
願書を送る
キーパーソンはそれを眺めては海に飛び込む
そんな平凡な日々を繰り返す
曇り空の夜にも美しい星空が
雲の上に展開していて、見ているものは
まだ未熟と思える1/8に切断されたメロンと
青竜刀だけなのが少しもったいない感じです
スカートを穿いた女性が路上を闊歩する
ごく当たり前の景色が懐かしい宵でした。


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、クローバーさん。




自由詩 星合 Copyright あおば 2015-07-07 23:53:35
notebook Home 戻る