きれいなまち
もり

駅前公園の噴水わきに
男がひとり、
あぐらを組んでいる。
近づけば つん、と臭う。
靴には穴がポカッとあいて、
のぞく親指は化石のよう。
伸びきった髪の毛だけが、
意志を持つように絡みつく。

みなが男を避けて通り、
だれも噴水に近づかず、

やがて

待ち合わせ場所を失った人々の
苦情により男は引っこ抜かれ、
残されたのは

ちいさな、ちいさな

たんぽぽだ。


そうしてすぐにまた
駅前公園の噴水わきは、

無数の靴跡で埋めつくされ、

清掃のおばさんは

忙しさをとりもどし、


鳥もいなくなった。



自由詩 きれいなまち Copyright もり 2015-07-04 16:16:18
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