去る日 遍歴 
木立 悟

 




ひとすじの光が
発ってゆこうとするとき
振り返り
振り返り虹を解いた


階段に映る
薄い手紙
窓の水滴
昼から午後へ
めくられる譜


何かが閉まり
開く音が
どこからかずっと響いている
いつのまにか
夜が生まれる場所から
離れてしまっていた


風は遠い
木陰は遠い
淡い暑さの
すべてが遠い


閉じたままの扉に
開いた扉の絵が描かれている
一本の樹が
夜を抑えている


中庭に置かれた光の手紙を
鳥がついばみ
かけらを蝶と蜂が持ち去り
小さな虹が残される


何も無い部屋のつらなり
枠だけになった窓の光
まぶしさは
よりまぶしいものの前で影となり
長く長く午後を標す
























自由詩 去る日 遍歴  Copyright 木立 悟 2015-07-01 10:22:02
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