歯磨き
アラガイs


窓を少し開けて鏡の中を覗き込む
壁と中途半端な景色に私の顔が重なる
「今朝も生きているのだ」と思えば、
、また嫌な気分になる
それはそうと、口を大きく開けて鏡を見るのは勇気がいるのだ
虫に食い荒らされた穴の中にはもうひとり仲間が潜んで居て
それは石器時代から生き続けている仲間さんだろう
今日も明日もずっとおとなしく死んでいて欲しいものだが、
、そうも逝くまいと食い物を待ち続けている
トマトやレタスじゃ物足りない
「甘いのか辛いのか」
はっきりさせてくれよ、
、なんて見て見ない素振りをされるとアタマに血がのぼるから
それでも、しばらく留守にしていると、穴の入り口はちゃんと拡っていたよ
生きている限りは仲間さんなんだろう
そんなに食い散らかしてばかりで異臭はしないのか、
と、キスしても心配の方が先に立つけど
きみが化け物に変わらないうちに僕が食べることを止めたい
「そんなことできるわけないさ」
世界に穴が開いて、先に棲み着いたのは僕の方なんだから
もっと古い食べものならよかったんだ
たとえばきみの穴が開いたまま
僕は鏡を見ることを止める
少しずつきみの歯も欠けて最後には無くなるけど
中途半端でもお金は使わなくてはならないものだから
きみは仲間とすべてを失うだろう
そして何も残らない毎朝
また鏡の中を見る
開いた口の中にはソロな泡が拡がり
歯ブラシと外の待合室は消えた
これで不愉快な気分も収まる訳で、
、景色が染み入るじゃないか
だから、もう、
、みつめたまま僕に話かけないでくれよ 。










自由詩 歯磨き Copyright アラガイs 2015-06-25 17:18:39
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